東洋大学校友会報 No.272
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6TOYO UNIVERSITY ALUMNI ASSOCIATION ● 272校友門かどわき脇 久ひさよし芳2007年東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科・ヒューマンデザイン専攻博士前期課程(人間環境デザイン学)修了。1980年〜オーロラ撮影を始め、北半球全地域のオーロラを撮影する。1990年写真集『AURORA』刊行、写真展「極北の光を求めて」を全国で開催などオーロラ写真の先駆者として、写真展・写真集・CD-ROM多数。講演、テレビ、ラジオ、など出演多数。公益社団法人・日本写真家協会会員。冬の定番ツアーになった極北のオーロラツアー。酷寒の夜空に妖しく乱舞するオーロラ。まだ見ぬ人は一生に一度は見たいと言い、見た人はあの感動をもう一度と言う。人々を魅了してやまないオーロラ。 37年前、私は北欧のフィンランド・ラップランド地方で、オーロラと出会った。当時、日本では極寒を体験した人も、極地に関する情報もない時代であった。極夜のラップランドで越冬中、地元の警察官から「太陽も出ない、暗くて寒い冬の時期に、観光客が入るはずはない。お前は何者だ。スパイか?」などの職務質問を受けたほどである。マイナス20度以下にもなる真冬の北極圏ラップランドは、今や世界各国から人びとが訪れる観光地となり、極地ではなくなっている。 ラップランドで出会ったオーロラは、後に私のライフワークとなり、北半球の全オーロラ観測地を訪れ撮影することとなった。毎年、独自企画のオーロラツアーなども企画し、ラップランドを訪れ撮影を続けている。オーロラについて講演する機会もあり、講演参加者からはオーロラを見るだけではなく撮影をしたいと、カメラの機種や撮影方法などの質問をたびたび受ける。人は、なぜオーロラを撮影したがるのだろうかと疑問に思った。ある日、恩師の写真家、故・杵島隆先生のスタジオに行った際、話題の中で「写真セラピーがあるのでは?」という先生の一言が脳裏の隅に残っていたこともあった。毎年、公益社団法人・日本写真家協会で年1度の写真公募展(JPS展)の募集があるが、応募者の年齢層のトップは65歳〜70歳で、70歳〜75歳がこれに続く。応募者に高齢者が多いのは、なぜだろうか。それらの疑問は、54歳で東洋大学の大学院に入学し、研究する動機となった。 朝霞キャンパスにある、大学院福祉社会デザイン研究科・人間環境デザイン専攻の内田祥士先生の下で、「高齢者社会とフォトセラピー(事例研究とキートスホームでの実践)」の論文研究に取り組んだ。写真セラピーの分野は、現在の日本でもほとんど知られていない。内田先生からアドバイスを受け、模索しながらの研究であった。実践として、特養至誠キートスホームで写真撮影やアンケートなどの協力をいただき、研究しているうちに、写真には知られざる秘めた力があることを知った。オーロラを撮る行為は、ハンティングでもある。定年退職した人が、カメラのシャッターを押せば写る写真は、手軽な趣味となり、生きがいともなっている。視覚や身体に障害がある人も、写真撮影や写真を通して、人とのコミュニュケーションを楽しんでいることなども知った。認知症の療法や防止の分野には、写真回想法という療法があること等々、大学院での研究は写真家の私にとっては、写真の新たな側面の発見と認識となった。 2015年には、87歳までカメラを触ったことのない母が撮影した写真との親子コラボ写真展を開催し、2016年は、大学院で研究した成果を埼玉県入間市全写真連盟で発表する機会を得た。写真セラピーの研究は、今も継続進行形である。これからも研究を続け、秘めたる写真の力(写真セラピー)をこれからの高齢社会に活かすべく、発信したいと考えている。 オーロラやオーロラツアー、写真セラピーなどに関心のある方、お聞きになりたい方は、左記までお気軽にご連絡ください。 E-mail:kadowaki@tg7.so-net.ne.jp TEL&FAX 042―476―2040高齢社会に写真の力を

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