東洋大学校友会報 No.274
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12TOYO UNIVERSITY ALUMNI ASSOCIATION ● 274校友宇うるの留野 光みつこ子1979年東洋大学大学院 社会学研究科社会福祉学専攻修士課程修了。 社会福祉法人芳香会入職。 2005年に至るまで高齢者施設や障害者施設の施設長、保育園の園長を経る。2005年社会福祉法人理事長就任。就任後は人づくり、社会貢献活動、芳香会研究所設立に尽力し、多くの福祉の分野での事業展開を行う。私が筆を執らせていただいたのは、昨年の12月に東洋大学の白山校舎で【校友会寄付講座】の授業を担当したことがきっかけです。「社会で活躍する校友たち」と題して、さまざまな分野の卒業生が、複数学部・学年の学生を対象に講義を行うものでした。その中で私は社会福祉事業分野の担当として、現在の社会福祉法人の状況・運営の工夫や中でも力を入れている種々の分野(A‌I導入や腰痛予防対策等)について講義を行いました。今回のエッセイの中で東洋大学での思い出を振り返るのと同時に、私が生業としている【社会福祉法人の運営と人づくり】のことをお伝えできたら幸いです。 私は昭和53年に東洋大学において社会学修士課程を修了いたしました。当時、社会福祉は修士課程の枠がなく、社会学に位置付けされていました。また、院生も他大学出身、他学部や研究所勤務の社会人学生で、年齢もさまざまでした。そのため、学部とは異なり授業以外にもいろいろなことを教えていただきました。学部は社会学部応用社会学科福祉専攻でしたので、入学時には亡父に「随分長い文字の学科だ。しっかり勉強するように」と言われたことが今でも脳裏をかすめます。亡父は無医村の農業を主とする地域で、開業医として仕事をする傍ら、昭和45年に社会福祉法人を立ち上げ、翌年に養護老人ホームを開設しました。この事業を始めた父は、社会福祉を学ぶ私に少し期待をしていたかもしれません。一方で、私は社会学部には当時の著名な教授が多数在籍していたことで成績は奮いませんでしたが、ゼミの友達との語り合いや、授業も楽しく受講したことを覚えています。卒業後は、東洋大学社会福祉学会の聴講や東洋大学にて輪番で開催されるさまざまな学会へ参加したり、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の学生ボランティアの報告会等で大学を訪問する機会がありました。仕事だけでは、狭い視野になりがちで、現状からの脱皮ができない。そんな思いもあり、現在でも大学には足を運んでいます。さて、私は設立48年目を迎えた社会福祉法人の理事長として10年目を迎えようとしています。当法人は、茨城県古河市(人口14万4千人)・結城市(人口5万3千人)で高齢者障害児者・児童(保育)の社会福祉分野の事業を展開しています。職員は約500人(女性が70%)、約800人の対象児・者に15職種以上の職員が福祉サービスを提供しています。近年、労働者の人手不足が問題となっておりますが、当法人も少なからず影響の波を受けております。そんな中、組織の総合力の強化は事業継続の必須要件と考えました。①各職種による会の発足と学習会活動、②委員会組織による実践活動、③複数のA‌I機器の導入と業務の見直し、④地域貢献事業の拡充による繋がりの強化、⑤多様性のある職場つくり⑥実践研究を続け学会等に発信する。これらを福祉事業の中で努めて参りました。こうした方策を通じて、個々の職員と組織内のエンパワメント力(広義の湧活、人々に夢や希望を与え、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させること)を高め問題の解消に繋がると考えております。このような実践のもととなった知識は、今回エッセイを寄稿する場を設けていただいた東洋大学で学んだことや大学院の先輩、他大学の教授や諸先生方から教えていただいたことでもあります。今後も、福祉分野で働く人づくりと地域に必要とされる社会福祉法人としての役割が担えるよう、そしてさまざまなご縁に感謝し職員とともに邁進して行く所存です。変化することの大切さを学ぶ

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