東洋大学校友会報『哲碧』 No.277
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温故知新哲学堂公園と井上円了TEPPEKI17北海道紋別市で、特別展「哲学者~井上円了の世界~」を開催紋別訪問時の書を展示三道の碩学の大家を祀った 日本的な三学亭 明治42年には、哲学堂公園第73スポットである三学亭が建てられました。三学亭は、三学が三角と音が似ていることから、すべて三角づくしの意匠を用いています。 三学亭が建立されたのは、世界的な四聖堂、東洋的な六賢台と並ぶ日本的な建物が必要であるということからでした。  この中には、わが国で古来から行われている、三道(神・儒・仏)の三道の碩学の大家を祀っています。神道では、平田篤胤、儒教では林羅山、仏教では釈凝然の三者です。 三学亭の天井には、三者を描いた石額が掛かっていましたが、現在は見づらいので、石額を写したものを無尽蔵に飾ってあります。哲学者・仏教主義者として自立し、「仏教を改良」する生涯の活動へ  井上円了の学問指向の底流にあったのは、寺院の長男として生まれ、一〇歳まで、両親から受けた宗門としての基礎教育を受け、一三歳で得度し、釈円了となりました。そのときの仏教上の思考が、学問進行に積極的な役割を果たしていくのです。 東京大学哲学科に入学した円了は、西洋哲学と本格的に格闘し、とりわけ西洋哲学の合理的方法論における真理の探求に没頭したようです。この方面での分析によって、キリスト教が「真理=哲学の究極」と矛盾しており、儒教もまた同じである、と結論づけています。これに対して、仏教がいかに哲学的な宗教であるかを解明し得たのです。 これより、円了は、哲学者・仏教主義者として自立し、「仏教を改良」する生涯の活動に確信を持てたのです。   学祖井上円了の没後100周年を記念した特別展が、紋別市立博物館で紋別市教育委員会、紋別教育文化振興会(橘有三会長)、東洋大学校友会紋別支部(北川榮一支部長)の共催によって、6月6日から30日まで開催されました。  円了は修身教会の設立を提唱、社会教育者として2度目の巡講を行っていた1907年に紋別を訪れました。その時に、市内の円満寺と交流し講演をしました。 その時の人々の温かさに触れて感動したことを記した書や講演で世話になった知人宛の手紙なども展示されていました。 ちなみに、後に円満寺住職橘薫一氏が東洋大学に進学し、学内で親交を深めた詩人の勝承夫(よしお)氏が紋別の5小中学校の校歌を作詞しています。哲学の重要性と円了の北海道での巡講の様子を熱弁 また、6月22日には、三浦節夫東洋大学教授を招き、井上円了をテーマにした講演会が市立博物館で開催され、講演では、僧侶に生まれた円了が哲学に目覚めた背景や紋別などの道内各地を巡講した際のエピソードなどを話されました。三学亭(提供/哲学堂公園)北海道紋別市井上円了展その5

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