東洋大学校友会報 第248号
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TOYO UNIVERSITY ALUMNI ASSOCIATION●2487近年の業務と恩師の思い出青森県生まれ昭和58年工学部建築学科卒業現在 一般財団法人日本不動産研究所 コンサルタント部 参事櫻田 直樹 さくらだ なおき東洋大学在学中は工学部建築学科に属し、日曜日を除くほぼ毎日、川越キャンパスに通った。4年時の卒業論文の作成では、内田雄造先生(本年1月、突然に逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします)の指導を得る機会が与えられたこともあって、研究室に滞留する時間も長くなり、在学中の楽しい思い出の殆どがこの時期のものであったような気がする。 在学中に学んだ事柄では、内田雄造先生の指導を受けた「都市計画」、「まちづくり」が現在の業務に結びつく。当初は民間の都市計画事務所に就職したものの、卒業後、バブル経済による地価高騰等の不動産市場メカニズムに翻弄されるまちづくりを目の当たりに見ることになり、現在の職場(一般財団法人日本不動産研究所)を選択するに至った。 日本不動産研究所は、不動産に関する調査・研究、不動産鑑定評価、コンサルティングを主たる業務とする民間シンクタンクとして昭和34年に設立され、現在は約300人の不動産鑑定士を擁する我が国最大の不動産鑑定評価機関である。なお、「不動産の鑑定評価に関する法律」によると、「不動産鑑定士でない者は、不動産鑑定業者の業務に関し、不動産の鑑定評価を行つてはならない。」と定めており、つまり不動産鑑定士は、不動産鑑定評価業務に関し独占的な地位を法的に与えられた専門家といえる。したがって、不動産鑑定士は比較的恵まれた職業といわれているが、早慶等の出身者が多く、残念ながら東洋大学出身者が少ない業界でもある。 日本不動産研究所ではコンサルタント部に属し、不動産鑑定評価以外に不動産に関するさまざまな調査・研究・コンサルティングを担当している。私が携わった業務を例示すると、全国の地価動向を先行的に示す地区の地価動向の調査と分析(平成19年から現在まで継続しており、国土交通省の土地総合情報ライブラリーに「地価LOOKレポート」として四半期ごとに公表されている)、地価高騰を誘発する可能性のある土地取引の形態分析とモニタリング手法の提案、一定の開発権の移転に関わる評価方法と利益調整方法の具体化策等がある。 また、近年は地方公共団体が所有する不動産(公的不動産)の合理的な所有、利用等を進めるための戦略(国土交通省では「PRE(Public Real Estate)戦略」と称している)策定を支援する業務が増加しており、そのきっかけとなった「PRE戦略を実践するための手引書」(国土交通省)の作成を支援した。 このような業務に対し、時々、内田雄造先生から厳しいご感想をいただくこともあった。例えば、一定の開発権の移転を実現する事業を支援する制度は、資本力のある企業による大がかりな都市開発のインセンティブを強化するものであり、事業当事者の利益誘導に似た構図になるとも考えられるからである。 しかし、こうした制度に対する私の提案は、事業当事者に帰着する利益の程度を一定の公益性のある事業内容に対する貢献度に応じて調整すべきであるとし(そのための貢献度の評価が重要である)、貢献度に対応する利益を超えた利益が発生する場合は、公共に還元すべきものであるといった内容を含むものである。つまり、市場メカニズムが円滑に機能する仕組みとルールを設けることによって、地域社会全体の利益を創出できるとの考え方であるが、このような説明で内田雄造先生にご理解いただけるかどうかは、あまり自信がない。 以上のように、私の業務経歴を振り返れば、いくつか例示するだけでも、常に内田雄造先生の目を意識してきたことが思い出される。先生ならどのように考えるだろうかと。今では自問自答とならざるを得ないものの、こうした自問自答はこのような業務に携わる限り続くのではなかろうかと思っている。校友

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