東洋大学校友会報 第251号
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TOYO UNIVERSITY ALUMNI ASSOCIATION●25117私と童謡校友育てを終え四十の手習いで、音楽教室に通い、師のピアノに合わせて童謡を歌っているとき、「え?、何?、これ?」と思うほど穏やかで優しい気持ちになっているのに、はっとし自分のことながら驚いたことがあります。不思議な体験としか言いようがありません。丁度その頃、放送局のアナウンサーを退職、フリーアナウンサーに転向、あせりといら立ちで悶々としていました。私のとげとげしい心を優しく包み込み救ってくれたのでしょう。そのことが童謡のことをもっと知りたいという心を掻き立てることになるのです。 二十年前から「七つの子」「赤い靴」「しゃぼん玉」などの作詞者、野口雨情の故郷、北茨城磯原をきっかけに北海道から鹿児島まで、作者のふるさとを訪ね、ゆかりの人たちの話を聞く旅を今も続けています。わかったことは単純で素朴でわかりやすい童謡には多くのメッセージが隠れているということです。作者の波乱万丈な生活体験や親子の絆、地球上の生きとし生けるものへの深い愛、いま、欠落しているやも知れない「哀れむ」「慈しむ」「悲しむ」という人間らしい心を育むものだったりします。 大正七年七月一日に発刊された子ども向けの雑誌「赤い鳥」主宰の鈴木三重吉は、「今、子どもたちに読んであげたい本がない。表紙からして俗悪で、その中味は功利主義とセンセーショナルな刺激にみちたものである。私たちは子どもたちの大切な情緒を育むための創作活動をしていきたい」と呼びかけ、当時一流と言われた詩人や児童文学者が賛同し活発な創作活動が行われました。芥川龍之介、北原白秋、西條八十、三木露風等そうそうたる顔触れです。「赤い鳥」がきっかけで他にもたくさんの児童向けの本も出版されました。 大正時代の三大童謡詩人の一人野口雨情は「童心をもぎ取られた子どもたちが心配だ」と言っています。果たして、今の子どもたちはどうでしょう?商業主義にのせられ、大人の歌を歌う子どもたち、リズミカルで活発なメロディーがあふれている中で、情緒あるメロディーである子守唄に拒否反応を起こす子どもたち、すぐキレるかと思えば無表情、無反応な子ども、大人。野口雨情はこうも言っています。「日本国が滅びるのは外敵によるものではなく自国民が国を滅ぼす」と、大正時代の良識ある大人たちが憂えたことが、今、現実となっています。だから、今、童謡を知っている世代が歌い継いでいくことがとっても大切なのです。今、私は取材してわかった先人たちの思いや童謡・唱歌の背景を語り歌う活動をやっております。年一回沖縄県内で開催している全国童謡まつりには、これまで長野、埼玉、東京等からも参加があり、今年六回目を迎えます。今後、県外での開催も予定しています。また、コンサートや講演会などで話す機会も増えていますが個人の力には限界があります。そこで「童謡の心を広め歌い継ぐ会」のNPO法人化へ向けて申請中です。 沖縄には「イチャリバチョウデー(出会う人はみな兄弟)」や「美ら心(ちゅらじむ)」という言葉があります。その沖縄から全国へ童謡の精神文化を発信していきたいと思います。 童謡は優しさの文化です。 やさしい文化が やさしい人を創り やさしい社会を創る 童謡は平和の原点です。 伊良皆 善子 いらみな ぜんこ子沖縄県生まれ昭和41年3月�短期大学部国語科卒業 (有)プロジェクトZenko代表取締役・フリーアナウンサー RBCiラジオ、ラジオ沖縄、FM沖縄 3局で7本のレギュラー番組を持つ。 ラジオ番組パーソナリティのほか、式典・祝賀会等での司会、「話し方教室」等の講師として活躍。また、長年、童謡作者のふるさとを全国へ訪ね取材。主な著書 � 『いらみなぜんこの童謡のふるさとを歩く』ほか。

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