東洋大学校友会報255号
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TOYO UNIVERSITY ALUMNI ASSOCIATION●25525いま学生全力疾走ゴールは、 スタートライン模擬裁判実行委員会2012年11月1日、白山祭前日。私たちは文字通り「疾走」していた。2号館の15階から大道具をかつぎ、5号館の地下1階へと、往復を繰り返す。1年間でもっとも全身をフル活動させる日かもしれない。一日で教室を「白山地方裁判所法廷」に仕立て上げなければならないのだ。予め計画した段取りに従い、迅速に会場設営を進める。「午後からリハーサル始めるよ、急いで!」慌ただしく、裁判員役として手伝いを申し出てくれた学生を迎える。説明、設営、練習、設営、調整、設営。陽が沈んでも、ギリギリまで準備を続ける。帰る頃にはランナーズ・ハイ、心地良い疲労すら感じてくる。模擬裁判実行委員会は、実際にあった刑事事件の判例をとりあげ、法廷での裁判手続きを忠実に再現することで、司法制度に対する関心や周知を図ることを目的に活動している。当日配布するパンフレットだけでなく、裁判に必要な書類や証人の発言を含めたシナリオまで、すべて委員が作り上げる。年1度、白山祭期間での一般公開で、目的の達成を図る趣旨だ。ある人に、「模擬裁判をやっているんです」と話したところ、「何が楽しいの?」とダイレクトに尋ねられた。ごもっともな疑問である。ゼミでもない、必修でもない、部室すらないのに、なぜ学生が集まり好き好んでこのような活動をするのか。ところで、昨年度は私達にとり節目の年となった。前年(2011年)度の公演後、1年間の活動を振り返り反省会を行ったところ、実に多くの課題が浮き彫りになった。練習時間が足りない、広報活動が不十分、内部での意思疎通が図れていない……そんな中、かねてから持ち上がっていたある目標について議論が及んだ。「裁判員裁判の導入」だ。模擬裁判の活動目的からすれば、2009年に施行された裁判員制度を公演に反映することは、ある意味私たちの務めであった。しかし、それが今まで実現できずにいたのは、既に挙げたような課題に捉われていたためであった。当時の実質稼働人員は9名。当然、人数を集める必要がある。フォーマットのないシナリオをどう作るか。会場のセットも増設しなければならない。そのための経費は?準備や練習時間は?基盤もおぼつかない現状で裁判員形式を取り入れるには、あまりにもリスクが高かった。それでも私たちは、前へ進むことを選んだ。やるなら今しかない。徹底的に問題点について議論し、内部改革を行うこととなった。新入生や多方面へのPR、年間作業予定の見直し、学祭主催者や学部との交渉。さらに、人数の確保のため、裁判員役を委員以外の学生から募ることを決めた。活動と並行し、授業の合間に練習やセットの作成をする。直前まで予算やスケジュールを調整。役割を果たし責任を負うのは各担当者であるが、円滑に進めるにはメンバー間での連携や情報交換が欠かせなかった。パンフレットが印刷所から出来上がる頃には、準備も大詰め。「明日は、よろしくお願いします。」白山祭当日。3日間計5回の公演は、無事成功をおさめた。指導にあたってくださった先生方、メンバー、応援に来ていただいたOBの方々、そして誰より、わずかな練習時間にも関わらず「裁判員」を見事にこなしてくれた有志の方々には、感謝してもしきれない。 「何が楽しいのか」。これは私見だが、おそらくこうして仲間と知恵を絞りだし、ひとつの目標に向けて全力で走り回ることに、大学生活の醍醐味を感じるのかもしれない。活動を通じて、授業では得られないスキルを非常に多く身に付けることができた。昨年度の目標は達成できたが、模擬裁判はまだたくさんの課題を抱え、発展途上である。私たちは既に、新年度に向けて走り出している。文責・渡邉真央(法律学科3年)

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