東洋大学校友会報260号
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いま学生全力疾走TOYO UNIVERSITY ALUMNI ASSOCIATION●26021悔いのない大学生活をウルジージャルガル     文学研究科     仏教学専攻博士後期課程3年僕は、2002年に留学生として内モンゴル自治区から日本へ来ました。当初、経済学を専攻し北陸地方の大学に入学しましたが、2004年に大学編入試験を受け、東洋大学文学部に編入学しました。以来、大学院前期、後期と研究をつづけています。留学生は、学費と生活費を日本もしくは母国の政府や親族に支給してもらうことが多いですが、僕の場合は違いました。しかし、それは僕だけの話ではなく、現在の内モンゴルから留学している大部分の学生に共通しています。僕は、日本への渡航に必要な費用以外は、今まで一度も家族から仕送りをもらったことがありません。なぜなら、僕の故郷の生活水準は、日本と比べものにならないからです。日本に来てから僕は、留学生活に必要なあらゆる費用をアルバイトや奨学金で賄ってきました。先生方やたくさんの日本人の友人のご紹介によって、アルバイト先を見つけることができ、仕事をしながら勉強できる環境を与えていただいたことに感謝しています。「モンゴル」というと、草原が広がり、その上で人々が遊牧生活をしているというイメージをもたれるかもしれませんが、現状はそうではありません。僕の故郷は今、鉱物資源が無秩序に採掘されて環境破壊が進み、数千年の間保たれてきた草原がこのわずか数十年の間に入植者により耕地化され砂漠と化し、遥か日本まで飛来する黄砂を引き起こす原因になっています。こうした状況が、そこに生活を営む人々を窮地に追い込みつつあります。日本の学生のみなさんは、「学費も工面できないほど生活が苦しいのに,なぜはるばる日本まで来て勉強したいのか」と疑問に思われるかもしれませんが、それは日本に勉学に最適な環境が揃っているからです。僕の少年時代には故郷に電気が通っておらず、石油ランプで明かりをとり、宿題をしていました。小学校5年生になると親元から離れ、学校の寮で共同生活をし、冬になると自分たちでストーブに牛糞をもやして暖をとっていました。こんなことは、多くの人には信じがたいかもしれません。しかし、僕の小学校生活は実際そうだったのです。これに対し、日本の大学には必ず冷暖房の完備した付属の図書館があるし、各自治体にも大小の図書館があって、たくさんの資料を自由に閲覧できるし、貸出もできるわけだから、これ以上贅沢な環境はありません。僕の故郷で「図書館」と言えば、一般的に日本における書店のことを言います。もちろん、大学の付属図書館もありますが、閲覧できる資料はほんの一部に限られていると言っても過言ではありません。しかし、今の日本の学生たちは、教室以外にも共同研究室や学習支援室などの研究環境が完璧に充実していながら、勉強する努力を怠っているように思えます。こうした環境を上手に利用し、大学生のみなさんはもっともっと勉強して欲しいです。分野、目的は違っても、一生懸命に勉学に励むことによって、将来の人生はずっと変わってくるはずです.僕の学生生活は、本年度で最後になります。今まで勉強や研究してきたことを博士論文としてまとめているところです。大学生時代の大半の時間をアルバイトに奪われ、あまりにも勉強できなかったことを最後の年になって痛感しています。学部時代に、今以上にもっと勉強しておけばよかったと後悔しておりますが、状況がそれを許してくれなかったのは、とても残念です。モンゴルのある有名な詩人の詩に「戻る、戻ると言っても、母からは二度と生まれることはない」というのがあります。過ぎ去った時間は二度と戻りません。大学生活は、人生のなかで一番楽しく勉学に精を出せる時だと思います。東洋大学に在学している大学生のみなさんに、僕から一言「悔いのない大学生活を」というアドバイスをさせていただきます。大学生のみなさん、未来の自分のために全力投球し、悔いのない大学生活をおくってください。

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