東洋大学校友会報 No.264
22/24

22TOYO UNIVERSITY ALUMNI ASSOCIATION ● 264著書彩々※この欄は、ご寄贈いただいた校友や大学関係者の編・著書を紹介しています。《 書 評 》『たばこ小屋・故郷』(鍾理和中短篇集 台湾郷土文学選集Ⅲ)研文出版 野間信幸訳(昭52中哲文・東洋大学文学部教授)※『校友会報』第263号で紹介 鍾理和という作家は、一九一五年生まれ。四十五歳で生涯を閉じた台湾の小説家である。ほとんど無名のまま逝ったから、台湾でも大陸でも、もちろん日本でも知る人はほとんどいない。その鍾理和の作品を研究し、短篇「同姓結婚」「野茫茫」「故郷」(「竹頭庄」「山火事」「阿煌おじさん」「義兄と山歌」)、それに「たばこ小屋」の諸短篇と中篇「雨」を加えて構成された一冊である。 野間教授は、五つの押さえておくべき点を上げている。その一、鍾理和が客家人であること。その二、同姓結婚をしたこと。その三、大陸体験を持っていること。その四、漢文作家であること。その五、結核を患っていること。 一つ二つ解説をつけよう。「客家人」とは、広西チワン族の人という意味。したがって「同姓婚タブー」は一層きびしいのだ。「大陸体験」には、満州も含めて、ということをつけ加えておこう。「漢文作家」って何?と思うかも知れない。日本統治時代に彼らは日本語で教育を受けたのだ。このこと一つを見ても、鍾理和のアイデンティティを感じとれる。 この作品集で強烈に焼きつけられるのは、野火の熱さと、台湾の暑さである。作品の内から熱気やら嗅気やらが立ちのぼってきて、読む者を圧倒する。 台湾製糖の軽便鉄道沿線が、まるで旧知の土地でもあるように、なつかしい気分になるのであった。また、病む稲の描写など感心して読了させていただいた。 故郷四部作が揃えられたことは、この作品集の大きな価値であり、一つの文化的収穫といってよい。大陸でも台湾でも、私小説的な作品は「散文」と分類されるようだが、故郷四部作はまさしく小説であって、散文などと分類されるべきではあるまい。日本人には、ぴったりで理解される作品集といえよう。 「本シリーズの出版に当っては、二〇一三年度『国立台湾文学館台湾文学翻訳出版補助』を得ている。深謝致します。」とある。そういう困難、障壁が文化や芸術、学問の前にはある。 一つ突き破って実らせた野間教授にエールをおくりたい。小笠原洽ひろよし嘉(昭33中哲文)児童文学者協会評議員『ドキュメントパナソニック人事抗争史』岩瀬達哉著(昭54哲学)      (講談社 2015年4月)『独学!わかるぞ ドイツ語』岡田朝雄著(東洋大学名誉教授)   (朝日出版社 2015年5月)『活字の映画館 明治・大正・昭和編―スクリーンの中に時代が見える!映画一〇〇年史』西川昭幸著(昭39応社)    (ダーツ出版 2015年4月)『民俗歌語り』圓谷勝男著(昭41院修私法)(風心社 2015年3月)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です