東洋大学校友会報『哲碧』 vol.278
19/28

TEPPEKI19校友会寄附講座の開講から現在まで本講義は学祖井上円了の建学の精神を学ぶために、校友会の支援によって文学部(東洋思想文化学科)が開講している寄附講座です。「日本の近代化と東洋大学 ―井上円了の哲学と実践―」をテーマとし、文学部総合科目となっています。2003年(平成15年)から開講されましたので、今年で早くも18年目となります。初年度は朝霞校舎で数人の受講者しかいませんでした。その後、開講地も白山校舎となり、講義も一時は集中講義形式としたことからか、受講者は飛躍的に増加しました。開講主体は当初は文学部インド哲学科でしたが、学科の改組改編に伴い、東洋思想文化学科となっています。現在は春・秋の通常の講義で、受講者も毎年ほぼ150名から200名程度になり、文学部開講の共通総合科目の一つとして定着してきました。受講者も広く第1部・第2部、通信教育、高校生(高大連携科目)の全学生を対象にしていますので、受講しやすい土曜日5限目に設定しています。この講義は井上円了に関係するものですので、当時はその専門家はほとんどいませんでした。開講の経緯は校友会会長だった故菅沼晃名誉教授が中心となり、この講義を通じて学祖の精神を学び、教職員も学生も東洋大学のアイデンティを共有することを目指したのです。講義の内容は、円了が登場する時代背景から解説し、江戸・明治・大正という日本の近代化という激動期の中で、円了の果たした役割を顕彰しつつ、その哲学を基盤とする活動の独自性を明らかにします。同時に、円了の後継者たちがその精神を継承しながら様々な活動を通して世の中にその精神を具現化してゆく、という視点で、円了の評価を現代の視点から考察することを目指しています。18年間の蓄積もあり、このような独自の内容になっていると自負しています。【プロフィール】渡辺 章悟(わたなべ しょうご)1953年群馬県生まれ。博士(文学)。東洋大学大学院博士後期課程修了、現在、東洋大学教授、東洋学研究所所長。これまで、東京大学、国際仏教学大学院大学、早稲田大学大学院、大正大学大学院各講師を務める。日本印仏学会、仏教思想学会理事、東方学会地区委員を兼務。著作:『井上円了の世界旅行―旅する創立者 海外編―』(東洋大学史ブックレット8、東洋大学)、『般若経の思想』(春秋社)、『大乗経典解説事典』(共編・北辰堂)、『大般若と理趣分のすべて』(北辰堂)、『金剛般若経の研究』(山喜房佛書林)、『般若経大全』(共編・春秋社)など。『般若心経』に関しては、『般若心経』(大法輪閣)、『絵解き般若心経』(ノンブル社)、『般若心経註釈集成〈中国・日本編〉』(共編・起心書房)、『般若心経註釈集成〈インド・チベット編〉』(共編・起心書房)などがある。寄附講座の回顧日本の近代化と東洋大学 – 井上円了の哲学と実践

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る