母校支援

介護業界で奮闘!住みなれた街で、自分らしく生きられる社会を目指して

印度哲学科と漫画研究会で培われたもの

平成14(2002)年、私は文学部印度哲学科に入学しました。哲学、とりわけ印度哲学という分野は、日常生活とは一見かけ離れた抽象的な思索を求める学問です。印度哲学には距離を感じる人もいるかもしれませんが、人生の意味について仏教に答えを求めていた当時の私にとってはここしかないという分野でした。

私は幼い頃から仏教系の宗教団体で活動をしていました。古代の思想家たちがどのように世界を捉え、意味を見出そうとしたのか、彼らの思考の軌跡をたどることはとても面白かったです。仏教学専攻で日本仏教の竹村ゼミに所属し、古典講読やテーマ研究をしました。勉強のできる学生ではありませんでしたが、学問を通して、「物事を多角的に見る視点」や、「深く考える習慣」を養うことができたと感じています。

一方で、私の大学生活のもう一つの大きな柱は、大学のサークルである漫画研究会の活動でした。そこでは自分たちでも創作を試みていました。漫画研究会では、印度哲学とはまた異なる「創造の楽しさ」を体験しました。絵や物語を通じて自己表現をする楽しみ、そして仲間との交流を通じて共有する喜びは貴重な経験でした。

これら2つの柱によって、私は自分の考えや感性を「他者に伝える力」、そして「他者の視点を理解する力」を養いました。

学生時代の経験は、私が社会人として働く際に大いに役立っています。他者とのコミュニケーションが不可欠な職場では、相手の立場に立って物事を考える姿勢や、自分の意見を的確に伝える能力が非常に重要です。学生時代に培ったこれらのスキルは、私が現在の職場で円滑に業務を遂行する上での土台となっています。

「人を支える」意義に共感、介護に携わることを決意

大学を卒業した後、私はどのようなキャリアを歩むべきかについて長く模索が続きました。宗教団体や総合スーパー、書店、区役所などの勤務を経て、最終的に行きついたのは、福祉業界、高齢者介護です。最終的に介護に携わることを決意したのは、「人を支える」ことの意義に深く共感したからです。

現在、私は介護事業を展開する社会福祉法人で採用・教育・広報に関する事務を担当しています。採用は、適切な人材を見つけて、組織に迎え入れ、定着してもらうこと。教育は、新たに採用された職員が業務を円滑に行えるよう支援し、成長を促すこと。そして広報では、法人の理念や活動を広く社会に伝えるための戦略を立て、実行することが求められます。

介護は印度哲学科での学びと直接結びつくわけではありませんが、仏教の慈悲の心や生命尊重の思想は、介護の倫理と通底するものです。そして、授業で培った思考力や分析力は、業務において論理的に考え、適正な判断をするのに繋がっています。また、漫画研究会での創造的な活動は、広報でのデザインや、効果を考える際に、さらに、チームワークの経験が、職場での協力関係を築く際に役立っています。

採用・教育・広報における日々の業務

採用活動では、採用サイトや電話、メールなどを通じて応募者からの連絡や相談に対応しています。人手不足のため応募は少なく、また志望度も低いことが多いので、応募があっても連絡がつかないことがしばしばです。なんとか面接まで繋げるために迅速な対応が求められます。教育においては、介護職員による委員会組織が研修計画とその実施を担っており、私はその議事録作成など事務作業を務めています。

広報においても、教育同様に介護職員による委員会組織にもとづいた体制で、広報誌、ホームページ、ブログ、SNSの運営を担当しています。インターネットの時代にはタイムリーでビジュアルな、ライブ感のある情報が求められますが、個人情報、著作権などに注意しなければいけません。

介護に興味のある方へお伝えしたいこと

人手不足の時代にあって、介護業界はとりわけその働き手が求められている業界の一つです。ただ、その反面ミスマッチが起きてしまうこともしばしばです。介護業界でのキャリアを考える際に大切なことは、まず自分の価値観やコミュニケーション能力をどのように活かせるかを考えることです。

また介護の仕事は、他者の生活や人生に深く関わる責任感のある仕事です。福祉の現場では柔軟性や忍耐力も求められるため、自分がその環境でどのように適応できるかも考えておきたい点です。

福祉業界は非常にやりがいのある仕事です。人々の生活を支えることに喜びを感じ、自分自身の成長を実感できる場でもあります。しかし、同時にその責任感や正解のないあいまいさに対応する難しさがあります。自分の価値観やスキルが福祉業界でどのように活かせるか、未経験であっても、ある程度自分なりの納得感があることが大切になってきます。

そして福祉業界は常に変化している業界でもあります。社会のニーズや法律の変化に対応するため、常に新しい知識やスキルを学び続けることが求められます。だからこそ、このような環境で働くことは、自分自身が常に成長し続けることができると言えます。

介護事業を通して社会に貢献したい。そのために目指すこと

私が目指すのは、介護事業を通じて、「誰もが最期まで住みなれた街で、自分らしく安心して生きられる社会」にすることです。そのため、今後もこの業界でさらに多くの経験を積み、より良いサービスを提供できるよう努力していきたいと思っています。特に、採用や教育においては、優秀な人材を引きつけ、育成することで、組織全体の質を向上させたいと思っています。

私が日々の仕事で心がけているモットーは「誠実さ」と「柔軟さ」です。誠実さとは、常に真摯な態度で仕事に向き合い、他者を尊重することです。福祉の現場では、この誠実さが非常に重要です。ご利用者様やそのご家族、そして職場の同僚に対して、常に真心を持って接することが求められます。

そして柔軟さ、こちらも重要な要素です。日々の業務が変化し、新たな課題が生じることが多々あります。そんな中で求められるのが、柔軟に対応し問題を解決する能力です。2つのモットーを大切にしながら、今後も福祉業界でのキャリアを築いていきたいと考えています。

画像は、駅伝の応援時の1枚。ひたすらに走る選手たちの姿におおいに励まされます。沿道から旗を振り精一杯の声援を送ることで、毎日の仕事に臨む力も得られているように感じています。

2006年
文学部印度哲学科卒業
川尻 佳司

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