母校支援

出会い~大塚富夫さんと内海隆一郎さんと朗読と

レジェンドの言葉に思い立ち会社設立

私が朗読を始めたのは、今から20年ほど前のことです。それは、現在もIBC岩手放送でアナウンサーを続けている東洋大学アナウンス研究会の先輩、大塚 富夫さんの一言がきっかけでした。

大塚さんは、1973年入社の年の10月から土曜日の午後にずっと自身の冠番組を持ち続けているIBCのレジェンドです。最近ではラジコというアプリを使って東京で聴いているファンの方も多く、私たちの朗読会に大塚さんに出演してもらうと、東京のファンが10人以上も来てくださり、講演の後はファンの皆さんがオフ会を開催するほどの盛り上がりです。

そもそも私が現在の「有限会社OFFICE A・STEP」という会社を作ったきっかけが大塚さん。盛岡では知らない人がいないほど有名で、幾多の朗読会や毎年「盛岡文士劇」に出演している大塚さんから「東京でも朗読会を開きたい」というお話を聞いたことからでした。ちょうどアナウンス学校を開校したいと思っていた私は、「それなら会社を作って、そこで朗読会を開催しよう」と思い立ちました。

2004年、朗読フォーラム開催。裏方から表舞台まで

そして会社を作った翌年の2004年9月27日に東京・日暮里サニーホールで「第1回 A・STEP朗読フォーラム ~時の過ぎ行くままに~」を開催しました。その時、私は、音響室に入ってマイクのミキシングをしていました。閉演後の打ち上げで大塚さんから「なんでお前が出演しないんだ」と言われ、東洋大学スカイホールで開催した2回目からは私も朗読することになりました。

その時に朗読したのが内海 隆一郎さん(ご本人は先生と呼ばれるのを嫌っておりましたので、さん付けでお呼びします)の作品「ビオちゃん」でした。この内海さんとの出会いにも、大塚さんが介在しています。というのは、大塚さんがIBC岩手放送で毎週放送していた朗読番組「ラジオ文庫」で取り上げていたのが、内海さんの作品でした。その内容がまさにハートウォーミング、内海さんの代名詞ともいえる言葉そのものだったのでした。

さっそく図書館で本を借り、読んでみました。どの作品も本当に心温まるものばかりで、すっかりファンになってしまった私は内海さんの本を探し回りました。ほとんどが絶版になっていましたが、最終的に全59冊を買い揃えることができました。我が家の本棚には、内海さんの本が文庫も含めて80冊以上、並んでいます。

実は、第1回の朗読会で大塚さんが朗読したのが内海さんの作品「うたごえ」でした。大塚さんのほか出演したのが東洋大学「劇団白芸」のOGの長谷 由子さん、そしてA・STEPアナウンスフォーラムメンバーの石上 貴子でした。

内海 隆一郎さんとの関わり

さて、内海 隆一郎さんについて書かせて頂きます。もとは編集者だった内海さんが初めてお書きになったのが1985年のこと、「金色の棺」という作品でした。「荒廃した中尊寺の復興を、タブーとされる藤原三代のミイラ公開に賭けた僧侶と、そのスクープを企図する新聞記者・-綿密な取材と膨大な資料調査をもとに描く書き下ろし長編」(筑摩書房の帯)という本です。

内海さんには文學界新人賞を受賞した「雪洞にて」のほか、芥川賞候補になった「蟹の町」、直木賞候補の「人びとの光景」「風を渡る町」「鮭を観に」「百面相」などの著作がありますが、何と言っても「人びとシリーズ」をはじめとする短編集、「朝の音」「街のスケッチブック」などの掌編が、ハートウォーミングと評される代表作品と言えます。

内海さんとは、大塚さんと一緒に何度か直接お話しする機会もありました。2012年6月24日には文京区の鳩山会館で「内海 隆一郎を読む~作者を囲んで~」という朗読会も開催し、内海さんと大塚さんの対談も実現しました。

内海隆一郎さんの世界に接してほしい

現在はコミュニティ放送局FM世田谷の「モーニングライブラリー」という朗読番組で内海作品を取り上げています。またYouTubeサイト「朗読・内海隆一郎の世界」では200万回近くの再生数を記録しています。内海さんが亡くなったあと閉鎖されていた公式ホームページ「内海隆一郎の本棚」の再開に向けた活動も行っていますので、是非一度、内海作品に接してみてください。大塚さんの朗読も聞くことができます。

朗読・内海隆一郎の世界 https://www.youtube.com/@astep3598
あすてっぷ朗読ライブラリー http://www.youtube.com/astep-aozora

ピアノと朗読。ちょっと贅沢なひと時

2025年5月11日には西新宿ガルバホールにて「ピアノと朗読のコンサート~時の過ぎゆくままに~」を開催します。ご興味のある方はOFFICE A・STEPのアナウンスフォーラムの公式サイトをご覧いただければと思います( https://www.a-step.net/ )。

1975年
社会学部卒業
武田 肇
元アール・エフ・ラジオ日本アナウンサー
J-WAVEニュースルームデスク
その他 ナレーション、CF、CM(永谷園、自動車各社、ロッテなど多数)
映画(声の出演―「アナザヘブン」「極道記者Ⅰ・Ⅱ」など)
A・STEPアナウンス・フォーラム主宰
https://www.a-step.net/

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