全国の支部ブログ

地下1階学生ホール・メルヘン研究会の青春

東洋大学校友会島根県支部の皆さんへ

月に一回、校友の皆さんから近況等のメッセージを頂き、皆さんにお送りしています。
10月は松江市新雑賀町にお住いの河内章成さんからのメッセージです。河内さんは1971年(昭和46年)に法学部経営法学科を卒業されました。
ご家族の仕事の関係で1歳までは松江で過ごし、その後東京で生活されました。大学卒業後は海運会社に勤務、後にご家族の経営される会社に勤務し、60歳を機に故郷松江に帰られました。
今回は、病気と闘いながらのメッセージ作成です。タイトルは「地下1階学生ホール・メルヘン研究会の青春」です。
ご一読ください。

なお、お願いが2件あります。
①10月10日は「第33回出雲全日本大学選抜駅伝競走」が開催されます。コロナ禍での沿道での応援は自粛ですが、テレビで選手にエールを送りましょう。
②10月1日からコロナ禍での困窮学生に対する食糧支援の取り組み「Hands to Hands」第4弾が行なわれています。東洋大学ボランティア支援室・校友会・甫水会が行なっています。詳細は、「校友会ホームページの母校支援」の欄に掲載されています。ご覧ください。

島根県支部支部長 福島康治


 

「地下1階学生ホール・メルヘン研究会の青春」

-紫煙たちこめるホール-

都電の停留所を降りて、狭い歩道で人とぶつかりそうになるのを避けながら、大学へ急いだ。今日は厳しい競争率を潜り抜けて入学できての、新入生ガイダンスの日だ。これからどんな日々になるのだろうと、思いを巡らせた。

正門から続くスロープには、部活動サークルの勧誘でごったがえしていた。腕を引っ張られて、危うく山岳部に入れられそうになったり、応援団のオッス!にびっくりした。そしてスロープの中間地点に貼られていた一枚のポスターに目が止まった。
『メルヘン研究会』。何だろう、初めて聞く言葉だ。そこに居た先輩の女性に尋ねた。
「なにをする研究会ですか?」、「私たちは児童文学を研究しています。興味あったら入りませんか」、「はい、入ります」。そして二号館の地下一階の学生ホールに案内されて入会の手続きをした。そこは、部室にはいれなかったサークルが机と椅子で勝手に占領して天井から畳一枚分くらいの看板をぶら下げて、それぞれたむろしていた。「今日の講義はまあ、いいや」と煙草をくゆらそうと二箱目のシールをはがした。隅の生協の売店がかすむほどに、煙が立ち込める地下のホール。独特のにおいの漂う、時間をもて余した者どもがひしめき合っていた。

 

-山本和夫先生と、五右衛門風呂-

「メルヘン研究会」。何をするかというと全国の民話採取や、自分で童話を創作して、ガリ版の謄写で印刷したものを他大学の児童文学研究会に送って交流を呼びかけた。そして女子大に声をかけようという事になり、飛び込みで訪問した。守衛室でお断りの大学もだいぶあったけれども、N女子大だけはOKの返事をくれて、二度、三度合同で文集を出した。

顧問の先生は、短大国文科の山本和夫先生。
児童文学の作家で何冊か出版されていた。もっぱら小川未明、坪田譲治の作品について討論していた。山本先生にはいろいろお世話になった。

毎年、夏休みに先生の実家の福井県小浜市で三週間の合宿をした。自炊で各自米を持参した。おかずは干物とカレーライスばかり。それよりも、風呂が五右衛門風呂だった。一番苦労する当番だった。何しろ薪を焚口にくべて火をつけるのだが、なかなか薪が燃えない。午後三時ごろから準備して、夕食は6時に済ませる。風呂がぬるくならないよう薪をつぎ足して、筒でフウフウ息を吹きけて調節する。夜の10時頃まで当番だ。やっと自分の番になって入る事になる。初めて入る五右衛門風呂。

でっかい釜に浮いている蓋を底まで体重で沈めろと言うがうまくいかない。うっかり釜に触ると熱くて苦しい。どうしてしていいかわからないと先生に言うと「下駄をはいて入れ」と教えられて、なんとか風呂につかることが出来た。釜全体が熱くて、ゆだって直ぐにフラフラになった。今でも五右衛門風呂に下駄をはいて入ったことは宝物となった。

 

-新入生勧誘に短大の教室に立つ-

三年生になった。部員を増やそうという事になり、顧問の山本先生の講義が終わったら勧誘の話をさせてもらうように頼んだ。短大の教室は約120人ぐらい、全員女子だ。「メルヘン研究会とは児童文学を研究しているサークルです」と、足がブルブルふるえていたけれども、やっとのことで声がでた。それは午前中の講義のことだった。例によって午後は学生ホールでぼんやりしていたら、入会希望者がメルヘンの机の前からズラリと30数名ほどの列ができた。入会申し込み書には書ききれず、大学ノートの余白に名前を書いてもらう人も数名いた。春から夏にかけて活動するにつれ、沢山いた女子も1人抜け、2人抜けと夏の合宿まで残ったのは10人となった。

 

-私たちのシュプレヒコール-

そして今。2002年(平成14年)廃止となった短大卒組と教育学科の3名と私の14名はまだ活動は続いている。

-この学園に
-私たちの手で
-児童文学の大山脈をつくろう。
-私たちは考える
-世界最高のエベレストが
-ただ一座地平線から、雲表にひとりですっくりと屹立していたら
(以下略)

河内 章成
1971年(昭和46年)法学部経営法学科卒業
松江市新雑賀町在住
電話 070-4146-1940
メールアドレス marchen19681127@icloud.com

 

 

 

 

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