母校支援

母校と将棋がつないだ縁

はじめまして、1981年法学部法律学科卒業の宮澤正泰です。東洋大学校友会のホームページの「著書彩々」にも掲載いただきました「例規でわかる!1年目のための公務員六法」が縁でブログを執筆する機会をいただきました。今回はこれまでのルーツと出版に至ったきっかけなどをご紹介します。

学生時代の一番の思い出は「将棋」

東洋大学の法学部に入学しましたが、目的は「法律」を勉強して法律関係の仕事に就職できればと考えてのことでした。ところが現実はそんなに甘くなく、入学後数か月で司法試験の受験を断念してしまいました。その代わりといってはなんですが、学生時代は将棋三昧でした。将棋は個人競技であり、自分の論理が正しければ勝つことができます。つまり法律と同じように論理的な思考が必要になります。

そんなことから講義のないときは将棋研究会の部室でいつも将棋を指していました。当時2号館の地下にサークル室があり、狭く劣悪な環境ではあったものの、この将棋を通して友人ができましたが、将来の仕事にも役立つ人脈づくりに発展するとはこの時は考えもしませんでした。

母校が作ってくれた縁

卒業後は千葉県の習志野市役所に就職し、市民課へ配属となりました。市民課での役割は住民の窓口対応です。法律や条例など例規に基づく論理的な思考が求められるため、学生時代の法律の知識を生かすことができるという点で私にはぴったりだったと思います。

市民課で5年経った年のことです。当時高卒の安達(旧姓:山本)幸希(法学部卒)さんという方が配属されました。仕事上先輩であった私は法律などの例規を理解する重要性などを説明しますが、それ以上に勉強熱心だった安達さんは、法律の勉強がしたいということで、私と同じ東洋大学法学部法律学科の夜間に通うことになったのです。

本格的に勉強するとなると、最初は何をどうすればよいかわからないものですから、参考書や単位の履修などのアドバイスをした記憶があります。が、このときの繋がりが縁で25年後に安達さんに助けられることになります。

それは2011年のことです。私は経営改革室という部署で、自治体の行政改革の一環として新しい会計制度(公会計という)を推進する担当者でした。その当時、私の発案で、バランスシート探検隊事業を実施することになり、その実施のためにバランスシート探検隊のメンバーに高校生隊員を募集しました。ところがなかなか集まらずどうしたものかと悩んでいると、安達さんの娘さんが当時高校生だということがわかり、何とかお願いして、探検隊のメンバーに参加してもらうことになりました。

2011年バランスシート探検隊

娘さんには高校生隊員の中心メンバーとしてイラストの作成や報告書の作成に携わってもらいました。参加してくださった娘さんに感謝をするとともに、安達さんに対しても鶴の恩返しのように感じたものです。

また、縁繋がりという部分で思い出すのは、バランスシート探検隊事業を実施した鹿児島県の沖永良部島の和泊町での研修での出来事です。研修前夜の懇親会の席で、副町長の前田修一氏が東洋大学法学部法律学科の先輩だったことがわかり、当時の東洋大学の野球や駅伝の話で盛り上がりました。恐縮するとともに、訪問先では研修翌日にプライベートで先輩直々に島内を案内してもらうなど、大変お世話になりました。

バランスシート探検隊とは?

バランスシート探検隊とは、専門用語の多い貸借対照表を「高校生にもわかる」視点で読み解き、財務状況を理解してもらおうという取り組みです。一人でも多くの方に興味を持ってもらおうと新聞社などマスコミを巻き込みながら関西や九州・四国の自治体で研修を実施するなど、事業の認知を広げていきました。

探検隊事業が10年経過し、その集大成としての会議が2021年8月19日に「バランスシート探検隊全国会議」として、事業の発祥地である習志野市で開催されました。その頃には既に退職していた私ですが、探検隊事業の発案者であり、元会計管理者という立場で参加をさせてもらいました。

その時の事務局が前述の安達さんでした。安達さんは管理職として立派に成長していました。また、私の在職中からバランスシート探検隊事業を担当し、退職後も探検隊事業を支えてくれた東洋大学経済学部出身の河北誠仁さんという若手の職員さんの姿もそこにはあり、母校出身者である2人が、探検隊事業を継続させていることに感謝の気持ちでいっぱいになりました。

話が前後しますが、退職する直前の3月のことです。一般会計・予算特別会計で、相原和幸議員(東洋大学経営学部卒業)から発言の機会をもらい、「バランスシート探検隊について現在全国の幾つかの自治体に取り組んでいただいており、総務省、財務省からもよい取り組みだという評価いただいています。」との答弁をしました。

答弁後、相原議員から「宮澤会計管理者が10年間つくりあげた公会計がなくなると意味がなくなってしまう。ぜひ議員の皆様、公会計について今後も質問等をしていきましょう」とのありがたい言葉をいただきました。

2015年長野県佐久穂町講演

本を執筆することになったきっかけは「将棋」

そもそも市役所職員が単著で出版することは稀だと思います。私がその幸運に恵まれたのは、学生時代の「将棋」と習志野市役所で立ち上げた「バランスシート探検隊事業」が大きな要因だと感じています。「将棋」が仕事に関係があるのかと疑問を感じる方もいらっしゃると思います。当時の習志野市役所には将棋部があり、部員には市の幹部職員も多く、様々な場面で相談に乗ってもらう機会がありました。私もその部員となることで人脈を広げることができたのは言うまでもありません。

バランスシート探検隊事業をはじめとする公会計制度の取組みを通じて、他団体や議員等の視察の受け入れ、全国の自治体等での研修講師や総務省の公会計に関する委員などを経験することになったのです。そんな中、第一法規出版社で公会計に関する企画の話があり、市長の許可をいただき、「公会計が自治体を変える!」を出版しました。その後も年に1冊のペースで公会計や会計の書籍を出版しています。

今回学陽書房社から出版した「例規でわかる!1年目のための公務員六法」の企画案は「仕事の疑問を逆引きで解決!公務員六法」ということでした。お話をいただいてから出版社と協議を重ね、自治体の条例や規則をはじめ、自治体の庶務担当や初任者が知っておきたい内容を抜粋して法的な知識を身に付けてもらう1冊とすることにし、今回紹介するに至っています。

ただ、私自身が自治体の全業務に精通しているわけではありません。とりあえず、自治体の例規集に目を通し、業務や福利厚生に必要な例規を選び、その内容をわかりやすく説明することに頭を抱えるほど苦労をしました。また、法令等の変更や法令の内容確認などの確認作業は時間がかかり、執筆から完成まで1年以上を要しました。

2018年習志野市議会議員団研修

読むときに抑えておきたいポイント

本書では、公務員が業務上・身分上知っておくべき大前提を業務の疑問を含めて解説したものです。その意味ではわかりやすい内容になっていると思います。私も自治体職員として40年近く働きましたが、一番頼りになるのが「法律」やそれに関する例規や判例などです。

前述のとおり、自治体職員が自治体のルールを全て知っているわけではありません。ましてや新人職員であれば、なおさら知識は少ないのではないでしょうか。どんな職員も完璧ではないからこそ、調べながら仕事をしています。調べる力を身に付けることが大切だと思っていますので、その一助になれば幸いです。

現在は情報源がインターネット上であふれていますが、間違った情報を見極める目も必要です。ルールは時代とともに変わるものです。時代とともに変わっていく例規を、公務員として学び続けてほしいと願うばかりです。

継続は力なり

好きな言葉は「継続は力なり」と「知は力なり」です。人生100年時代と言われる中、私には30年以上の時間が残されています。大学時代に勉強した「法律」と「将棋」をある意味、継続したことから今回の出版に結びついたとも言えます。人生の経験は「知」の蓄積であり、それを糧にさらなる「知」を得て、充実した人生を迎えたいと考えています。これからも執筆などの仕事を通じて感謝を忘れず、1日1日を大切に生きていきたいと思います。東洋大学の学生の活躍は喜びです。中でも正月の箱根駅伝は毎年楽しみです。これからも母校を応援しています!

1981年卒業
法学部法律学科
宮澤(旧姓:佐久間)正泰

総務省人材ネット
https://www.soumu.go.jp/main_content/000809570.pdf

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