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スマートフォンが私たちの夢を変える?!

私たちに毎晩訪れる睡眠と夢。皆さんが見る夢にはどんなものがあるでしょうか。非現実的で楽しいファンタジーの夢、好きな人が出てきて、目覚めたときに夢だったかと残念で続きをみたくなるような夢は楽しくて良いですね。一方、飛び起きて夢で良かったと安堵する悪夢はなるべくならみたくないものです。

夢の中の出来事はどこから来るの?

そもそも夢の中に出てくる人物やモノや設定は、何から出てくるのでしょう。思いもよらぬ人が夢に出てくると驚きますよね。中には、自分がその人を気にしている、あるいは夢に出てきた人が自分に何かメッセージを伝えようとしていると解釈する人もなかにはいるかもしれません。

その答えは、私たちの脳の中の記憶のライブラリーから出てきた、になります。毎晩の睡眠の約20%は夢見る睡眠で構成されています。夢は何のためにみるのか。明確にはわかっていませんが、少なくとも睡眠中には記憶を整理していて、その整理された記憶の断片が夢に現れると考えられています。

私たちの脳には日々様々な情報が膨大な量で入ってきます。これらの情報を睡眠中に重要度を分類して、大事なものは過去の情報と結びつけてしっかり保存する、不要なものは整理するなど、これからの生活に役立つ情報を分類する、つまりより良く生きるために記憶を整理していると考えられます。将来起こりうる危機的事態を夢の中でシミュレーションして備えている、という仮説を提唱している研究者もいます。

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「夢と現実の連続性仮説」〜夢の中にもスマートフォン

夢を見る自分と現実を生きる自分はもちろん同一人物で連続していますし、夢の中に現れる記憶情報は、日々の生活の中で現れる情報と連続している(「夢と現実の連続性仮説」という)ことになります。つまり私たちの夢には過去の生活から現在の生活まで直接あるいはメディア等で間接的に体験した出来事、出会った人やモノの記憶が現れます。

その中でもスマートフォンは、私たちの身近な生活必需品でありますから、夢にも当然でてきます。スマートフォンの一番の機能は「連絡」です。世界的に頻出する夢のテーマでの中では代表的な「間に合わない」夢にもたびたび登場します。

時間に間に合わない時に、連絡しようとするが、思うように番号を押せない、電波がつながらない夢などを見たこともあると思います。昔ならダイヤル式の黒い電話、ピンク色のプッシュホン式の電話、ポケベルから、携帯電話から、今やスマートフォンです。

『夢』に関するエピソードをご紹介します

〈昔からの間に合わない、つながらない夢で電話機の進化も夢に反映〉

「電話がつながらない夢」を子どもの頃から繰り返し見ているという『通販生活』読者の夢。

夢の中ではいつも同じ状況なのに、電話だけがダイヤル式電話、プッシュホン式電話、携帯電話、スマートフォンと徐々に変化しているそうです。
(引用『はじめての明晰夢―夢をデザインする心理学』,朝日出版社)

通信手段としての電話はいつの時代も変わらないけれど、ディテールはどんどん時代の技術革新に併せて進化していくのです。今ではLINEが気軽な手段です。高齢になってもスマートフォンを自由自在の時代になってきました。

〈ラグビー部の彼に「じゃあね」という70代女性の夢〉

次に紹介するのは70代女性で心理カウンセラーの夢です。

夢の中で女子高校生に戻って、就職内定したラグビー部の彼に「仕事がんばってね!私はカウンセラーを目指すね!」とLINEで伝えたそうです。その女性が高校生の頃は、もちろんスマートフォンもLINEもありませんでしたが、夢の中で現代の女子高校生になって当時に戻るというところが面白いですね。
(引用『夢を読み解く心理学』,ディスカバー・トゥエンティワン)

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夢とメディアの影響

現実ではインターネット越しのバーチャルな接触であっても、夢の中ではそれらが自分と同じ空間に登場します。例えば、YouTuberのグループと一緒に遊んだ夢、SNSの炎上事件に巻き込まれる夢、ゲームに登場するモンスターに襲われる夢などがあります。
(引用『一万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』,ワニブックス)

スマートフォンは連絡だけではなく、音楽を聴く、動画を見る、ゲームをする、運動や睡眠も測定する日記的な機能も持ち併せています。その他、女子大生のスマホの夢には、スマホをいじっている夢(21歳女性)や、やったことのないスマホのゲームで遊んでいる夢(19歳女性)などがありました。

岡田先生との共同研究『スマートフォンの利用は夢見に影響を与えるのか?』では、2012年から夢想起頻度(夢を覚えている頻度)が減少し、これは2013年にスマートフォン普及率が70%以上になった(総務省,2018)ことで、睡眠時間そのものが減少したことも一因と考察しています。

実際就寝前のスマートフォンの利用時間が短いほど夢想起頻度が高いという結果でした。現在ではスマートフォンの普及率が90%以上になっていますので、就寝前の利用のし過ぎで、睡眠時間や夢を見る時間が減っていないか、ご注意ください。

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人生の3分の1の時間を睡眠に充てるなら、人生の12分の1~15分の1は夢を見ている時間と考えられます。校友会の皆様には「夢をみる」時間のうち覚えていることができた夢の情報をうまく活用して、自分の今の状況や心の調子を知ることに生かしていただければと思います。

東洋大学社会学部社会心理学科
教授 松田 英子

下記記事もぜひご覧ください。
LINK@TOYO
「夢は自分の記憶から作られる?悪夢の意味や良い夢を見る方法を臨床心理士に聞いてみた」
※東洋大学のウェブサイトへ移動します。
https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/life/dream-meaning

参 考 文 献

松田英子(2021).『夢を読み解く心理学』(ディスカバー・トゥエンティワン)
松田英子(2021).『はじめての明晰夢―夢をデザインする心理学』(朝日出版社)
松田英子(2023).『一万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックス)

岡田斉・松田英子(2020).『スマートフォンの利用は夢見に影響を与えるのか』
文教大学人間科学部人間科学研究,42号,59-70.

総務省(2018). 平成30年度版情報通信白書 情報通信機器の保有状況 第2部基本データと政策動向 Retrieved 2023年10月3日
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd252110.html

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