母校支援

リカレント教育に先鞭をつけてきた東洋大学の誇り

社会人教育の一翼を担い続ける東洋大学

 卒業生の皆さまもご存知の通り、東洋大学は創立者・井上円了先生の目指した「余資なく、優暇なき」人々のための「社会人教育」と「開かれた大学」としての理念を継承し、日本の社会人教育の一翼を担ってきました。その足跡についてご説明させていただきます。

創立直後から「余資なく、優暇なき」人々のために講義録の郵送による教育、いわゆる通信教育を開始しております。対象には地方の教育者として働く若者が多数含まれており、教員としての教養を高めると同時に中等学校での教員資格取得を目指す者も多くおりました。まさに、キャリアアップ型のリカレント教育です。

皆さんの先輩である「栗山津禰(くりやまつね)」さんのお名前を覚えている方も多いと存じます。私立大学(当時は男子のみの専門学校)初の女子学生として有名ですが、栗山さんは1920年東洋大学を首席で卒業し、府立第五中(現 小石川中等教育学校)で全国の中学校(男子校)初の漢文科女教諭として教鞭をとられます。その後、1930年には母校東洋大学の教室を使い、文検(中等学校教員免許を与えるための検定試験)準備の女子のための国語漢文講座を開催します。土曜日の午後には、一般の人も聴講できる源氏物語講座を開催しました。これは、女性のキャリアアップ・再就職のためのリカレント教育、そして公開講座の先駆とも言えましょう。

画像:「五中・小石川デジタルアーカイブ」より抜粋

第2次世界大戦後、新制大学として再出発した本学には夜間部が置かれていました。ここは、まさに社会に出た人々が働きながら学ぶ場としての役割を担っていました。2022年現在、夜間部・イブニングコースでは本学が日本で最大規模を誇っております。社会人教育の歴史は、1994年からの夜間大学院の設置によってさらに豊かになります。学生は、現役の教員、看護師、医療・福祉関係者が多数を占め、それぞれにキャリアアップを目指していました。

21世紀型リカレント教育の実施

そして21世紀。東洋大学は、日本の最前線とも言える内容のリカレント教育を複数のセクションで実施しています。例えば次の3つの取り組みをあげることができます。

まずは、2006年にインフラ整備・地方創生等の課題解決を目指したPPP(公民連携)を専門に研究する世界初の社会人大学院として、経済学研究科に公民連携専攻を発足いたしました。

※参考:校友会HP「卒業生にはメリット豊富な母校の生涯教育!」
https://www.alumni-toyo.jp/news/toyoalumni-015/

2点目として、2017年に赤羽台キャンパスに開設された情報連携学部では、高度なIoT技術を身に付けたい技術者、学び直し機会が少ない地方のICT技術者、あるいは学生時代に体系的なコンピュータ・サイエンスを学んでいない社会人に対して、多様なリカレント教育を提供しています。

さらに第3の例として、大学院経営学研究科では、中小企業診断士養成コースを開設しており、MBA(経営学修士)の学位と合わせた学修内容が人気を呼んでいます。こうした学部・大学院における現代的なリカレント教育の取り組みは今後も一層充実して参ります。

アフターコロナを見据えた新たなリカレント教育の展望

 昨年校友会で実施した「リカレント教育」講座の事前調査では、副業・パラレルワーク、パラレルキャリアへの興味がトップとなり、起業、健康をテーマとした内容へのニーズがこれに続きました。

この調査からも明らかな通り、学びに対する社会人の期待は時代と共に変化し続けています。人生の様々な時点において、新しい学びに挑戦することで新たな可能性が拓かれていきます。それは東洋大学の心である「他者のために自己を磨く」ことと通じる側面があると考えております。

アフターコロナにおける東洋大学リカレント教育像(矢口試案)

この図は、大学・大学院におけるリカレント教育の実態と、人生100年時代における生涯学習の文脈におけるリカレント教育とをイメージとして示したものです。すでに終身雇用や単線型の職業生活は多数派ではなくなりました。時にはキャリアを変更したり、起業をしたりする多様で柔軟なキャリア設計が求められており、そうした要望に答えることが21世紀のりカレント教育として求められています。

さらに、人生航路そのものを広義のキャリアとしてみてみると、自らの人生において蓄積してきた経験や知識を改めて確認してみたいという願望を持つ卒業生の方も多いのではないでしょうか。母校の大学院等で、その作業に取り組んでみてはいかがでしょうか。

卒業生の皆さまへの期待

東洋大学は135年の伝統を踏まえ、さらに前進を続け、卒業生の皆さまが母校に誇りを持っていただけるよう、これからもたゆまず「活動の中で奮闘」して参ります。生涯に渡る学びの拠点として母校を活用していただければ幸いです。

2022年5月10日
東洋大学学長 矢口 悦子

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